でばなをくじかれる

プール

出鼻をくじかれるとは、まさにこのことだと思う。

カラダがあまりにもなまっているから、なんとかしなければと常々考えていた。

仕事場からそう遠くないところに、この春、リニューアルを終えたばかりという、市が運営するシルバーセンターなるものがある。

シルバーセンターというくらいだから、高齢者の健康増進のための施設であり、僕のような60歳を過ぎたものが行くのにちょうどいい。ここには20mのプールがあって、基礎体力を作るためにはうってつけだ。

平日のお昼前後ならお店もヒマなので、1週間に一度ぐらいなら行ってきてもいいよと、妻から了解をもらい、通うことにした。

妻が了解した理由はいくつか考えられるが、第一に圧倒的なコスパの良さがあげられる。料金は2時間まで290円。もちろんそんなに長く泳いでいられるわけはないが、これなら気兼ねなく行くことができる。

スポーツクラブに入会したもんなら、毎月1万5千円くらいかかって、そのくせい月に数回しか行かなくなるというのが目に見えている。

第二に圧倒的な洗濯量の少なさだ。海水パンツとアンダーパンツ、キャップ、それとタオル。スポーツクラブやジョギングと比べると圧倒的に少ない。

これならなんとかついでに洗濯してもらえるレベルなのだ。

第三に、常々、妻には「急に走るな」とか、「無理するな」と言われている。泳ぐのだったら無理をしようもない。

自分でもこんなに運動不足なのだから、どうカラダを慣らすべきなのか考えていた。泳ぐというのは全身運動でありながら、カラダへの衝撃も少ないし、筋肉痛になりにくいのだ。

ということで、まず1回行って、30分ぐらい泳いだ。

それまで眠りが浅かったのだが、その日はぐっすりと眠ることができた。適度な運動が心地よい疲れを呼び、深い睡眠へとつながったのだろう。

これは画期的だ!なにもかもが計算通りだ!
カラダが慣れてきたら、スポーツジムにステップアップすればいい。とさえ思えた。

しかし、翌週も行こうと考えていた矢先、例年より早いインフルエンザの流行というニュースが流れ、暗雲が立ち込めたのだ。

危険を感じた高齢者や体調が思わしくない高齢者は無理して来ないだろうから大丈夫だろう、とシルバーセンターに行った。案の定、空いていたので、今度は40分ほど泳いだ。

その日もまたぐっすり眠ることができた。やっぱり行ってよかった!と思った。

しかし、翌日、お昼頃になると、その思いは完全に打ち砕かれた!

仕事をしていると、透明な鼻水がす──っと流れ始めた。噛んでも拭いても流れ続ける。仕方がないので、ティッシュを細かくちぎって丸めて、鼻につめたりしてみた。でもすぐヒタヒタになってしまい、それを何度も何度も繰り返すこととなった。

花粉症アレルギーの僕は、鼻の奥の粘膜がプールの塩素に反応したらしい。妻からすぐ病院へ行って、アレグラをもらって来るよう指示が出た。

処方されたアレグラを飲んで3日目ぐらいに効いてきて、ようやく鼻水が垂れなくなった。

その頃にはもう、プールに行くのはあきらめたのだった。

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