文章が思うように書けないとき、
それは「届けたい相手」がぼやけているからかもしれません。
この記事では、書くことに悩んできたぼく自身の経験をもとに、「誰に向かって書くのか」という視点の大切さについて書いてみました。
なかなか書けないと感じているなら、ヒントになるかもしれません。
はじめは「誰に読まれなくてもいい」と思っていた
ぼくがはじめてブログを立ち上げたのは「はてなブログ」でした。
最初のころは、身近で起こったことや大学時代の思い出、会社でのできごと、面白かった本のことや映画の感想など、備忘録のように書いていたのです。
読んでくれる人はほとんどいませんでした。たまに星をつけてくれる人がいましたが、そんなに多くはなかったのです。
だんだん、「これでいいのかな」と思うようになりました。
アクセス数や他人の反応が気になり始める
ブログの知識が増えてくると、気になり始めたのが「アクセス数」や「他人の反応」。
ネットや書籍で調べるうちに、
「ブログで月に○万円稼ぐ」
「アクセスを増やす書き方」
そんな情報が目に入るようになりました。
無料のブログサービスよりも、独自ドメインを取得してWordPressで運営した方がいい、という記事を読んで、WordPressの立ち上げ方やSEO、アドセンスなどの本を買って勉強しました。
確かにブログを作ることはできたけれど、「それで書けるようになったわけではなかった」のです。
アクセスが多い人たちの真似をして、よくある「WordPressの始め方」記事も書いてみました。でも、どうしても気持ちが乗らない。書いていて楽しくありませんでした。
「誰に読んでもらいたいのか」という問いに戻る
結局ぼくは、ひと回りして、「なんでブログを書こうと思ったんだっけ?」という問いに戻ってきました。 でも、その答えは簡単には見つかりませんでした。
あるとき、ふと気持ちを切り替えて、とりあえず「書くこと」そのものについて書いてみようと思って書いています。
いくつか本を読んでいくうちに、ある共通点に気づきました。
それは──
「誰に向かって書くのか」を意識している。
ということです。
スティーヴン・キングは、奥さんに向けて書く
たとえば、作家スティーヴン・キングは、『書くことについて』のなかで、こんなことを言っています。
「ぼくの理想の読者は、妻のタビーなんだ。」
彼は小説を書くとき、タビーがどう感じるかを想像しながら書いているそうです。
「ここで笑ってくれるかな?」「この部分は長すぎるって言われそうだな」
そんなふうに、理想の読者である奥さんの反応を思い描きながら文章を紡いでいくそうです。
理想の読者がいるおかげで、ひとりよがりな文章にならないんだと言っています。
古賀史健さんは、「10年前の自分」に書く
古賀史健さんは、著書『20歳の自分に受けさせたい文章講義』のなかで、書くことを「料理」にたとえています。
「つくったから食べるのではなく、食べる人がいるからつくるのだ」
その「食べる人」が見つからないときは、 10年前の自分に向けて書いてみよう、と勧めています。
10年前のぼくは、何に悩んでいたか? どんな言葉なら届いただろうか? どんなふうに話せば、うまく受け取ってくれただろうか?
そんなふうに過去の自分と対話することで、今の自分の言葉にリアリティが宿ってくる。 いまこのとき、日本のどこかにいる「10年前の自分と同じ悩みを持つ誰か」の心に届くのです。
ナムグン・ヨンフンは、「たった一人に宛てて書く」
『みんなが読みたがる文章』の著者ナムグン・ヨンフンも、同じようなことを言っています。
「あらゆる人に満足してもらおうとすると、何も書けなくなる」
代わりに、「たった一人」を思い浮かべて書いてみる。
娘や息子、大切なパートナー、昔お世話になった先生。
誰でもいい、具体的な一人の顔を思い浮かべるだけで、思い出や感情がよみがえってきます。
それは、ありきたりな文章ではなく、 自分の経験や思いを通した、血の通った文章になるのです。
文章に「クスッ」を添えてみよう
もうひとつ、大切にしたいのが「楽しませたい」という気持ちです。
誰かに読んでもらいたいと思ったとき、その人にクスッと笑ってもらえたら嬉しいですよね。ユーモアや軽いひとことをちょっとだけ添えると、文章はぐっと親しみやすくなります。
理想の読者が笑ってくれる姿を想像しながら書く。それだけで、書くことがもっと楽しくなっていくはずです。
まとめ:「たったひとり」の読者に向かって書いてみよう
スティーヴン・キングにとってのタビー、
古賀史健さんにとっての「10年前の自分」、
ナムグン・ヨンフンが語る「たった一人」。
その姿勢には共通点があります。
「読む人がいるから、書く」ですね。
書くことに悩んでいるときこそ、 「たった一人」の読者を心に思い浮かべてみてください。 それが、言葉をつむぐヒントになります。